在来構法とツーバイフォー構法の長所・短所
私が感じた建築構法による長所と短所
DIYで建てる家の設計図を書くというテーマの3回目です。
今回は、家をどのような構法で建てるのかという話です。
家を建てる際に、その基本となる構法には大きく分けて2つあります。 在来構法とツーバイフォー構法の2つです。
上の写真は、襟輪小根つぎというややこしいほぞの組み合わせです。 これは13分の1の模型ですが、在来工法で使う組み合わせのひとつです。
在来構法とはなんだろう?
日本に古くからある伝統的な構法ですね。 角材という軸を組み立てていくやり方なので、軸組構法とか在来軸組構法とも呼ばれるとか。 材木を切ったり穴をあけたりして、それを組み合わせていく建て方です。
これがやりたくて、家を建ててみたいという人も多いのではないでしょうか? 実際、私の周りでは、この在来構法で家を建てている人の方が多いです。
私も、これがやりたくてセルフビルドを始めたと言ってもいいです。
しかし、ほぞとほぞ穴を作る事は難しくはないですが、これをぴったりと合わせるのは素人ではほぼ不可能です。 在来構法が、職人の世界と言われるゆえんですね。
素人が組み合わせようとすると、大体ハマらないかスカスカになってしまうかのどちらかです。
掛け矢で叩いて入るくらいがちょうどいいのですが、この微調整が1ミリ以下の世界なので、かなり経験を積まないと難しいと感じます。
在来構法の短所
組み方のひとつ襟輪小根ほぞ
以下に書いたものは、あくまでも私が感じた長所・短所です。 まずは、短所から。
在来構法は地震に弱いと言われます。 しかし、最近は耐震補強用の金具でこれでもかというくらいに補強しますので、手を抜かない限りはツーバイ構法に劣らないと思います。
ですので、例えほぞの組み合わせがスカスカでも、金具で補強してしまえば問題ないような気もします。 程度にもよるでしょうけど。
この辺は、建てる人の性格や考え方で大きく左右されると思うので、ちゃんとした家が建つかどうかは、技量よりもむしろ建てる人の性格や考え方の方が大きいのではと私は感じています。
あと、短所としては前述しましたが造作が難しい事ですかね。 どんなに器用な人でも、ある程度の経験を積まないと、ほぞの組み合わせがうまく行きません。
在来構法の長所
在来構法の長所は、建てている間でも変更がしやすいという点にあります。 ここに一つ窓を追加したいと後から考えても、在来なら割と簡単に変更できますからね。
あと、在来の長所としては、屋根が先に出来るというのが大きいと思います。 屋根がかかってしまえば、あとはその下がズブ濡れてしまう可能性は低いですからね。
ツーバイフォー構法では、床から先に作っていくので、屋根がかかるまでは床が雨ざらしになってしまう可能性が高いです。
少人数で家を作る場合、床を作ってから屋根がかかるまでに結構時間が掛かってしまうので、先に屋根が出来るメリットは大きいと思います。
私の場合、床が出来てから屋根がかかるまでに半年かかってしまいました。 その間に、濡れないように養生するのが一苦労でした。
ツーバイフォー構法とはどういうものか?
ツーバイ構法の壁
ツーバイフォー構法は、合板と角材を組み合わせて面を作って家を建てていく構法です。 枠組み壁構法とも呼ばれるようです。
北米で発達したやり方で、この構法であれば自分でも家を建てられるので、それで開拓民たちに普及した構法なのだとか。
元々は、イギリスのフレーム構法が始まりで、それがアメリカに渡ってバルーン構法という名で普及していったそうです。
色々とウンチクを書いてしまいましたが、 つまりは素人向きです。 アメリカでは、今でもこのやり方で、10人に1人ぐらいの割合で自分で家を建てているそうです。
よくテレビなどで、「この建物は1本の釘も使っていないんですよ」なんてセリフを聞きますが、あれが日本人の美意識だとすると、ツーバイフォー構法というのはこの美意識を全否定するやり方ですね(笑)。
とにかく、大量に釘を打ちます。これでもかというくらいに釘を打つ。 枠組みを作っている時は、一日中金づちを振って釘を打っている感じです。
釘打ち作業中、一日を終えた時には利き腕がカチカチになっていたくらいです。
ネイラーと呼ばれるエア工具を使えば楽なんでしょうけど、かなり高価な工具なので(セットで10万くらいする)購入しようという気にはなりませんでした。
ツーバイフォー構法の長所
体験塾での床作成中の様子
ツーバイフォー構法の長所は、何と言っても熟練の技が必要ない事でしょう。
大工をやる前は、ツーバイフォーの方が難しいのではと感じていましたが、先に書いた通り素人向けに考え出された構法なので、こちらの方が簡単です。
簡単に建てられる分、怪我をする可能性もツーバイフォー構法の方が低いのではないかと思います。 工期も、在来よりは多少短くなります。
あとは面で構成されているので、構造的に頑丈になります。つまり、地震に強いという事。 阪神大震災の時、ツーバイ工法で建てられた家は1件も倒壊しなかったとか。(ホンマかいな)
在来と違って、使う材料の種類が限定されているというのも長所と言えるかもしれません。
在来は角材の幅や厚みが結構バラバラで、使う場所によって使い分ける必要がありますが、ツーバイの場合は使うのは合板とツーバイ材のみ。
一応、ツーバイ材にも厚みや幅の違いはあるのですが、1×6とか2×10とか分かりやすく規格化されており、表示にもはっきりと書いてあるので、間違う可能性は低いと思います。
上の写真は、ツーバイ構法で床を作っているところです。体験塾で建てた家のうちの一軒です。 ちなみに、この時はまだ私は体験塾に参加しておりませんでした。
ツーバイフォー構法の短所
ツーバイ構法の欠点は、ほぞを作ったり組み合わせたりする楽しみがないことです(笑)。 材料同士を釘で打ち付けて組み立てていくだけなので、細工をする楽しみはあまりありません。
電線や水道管などを通すために、穴を開けたり切り欠いたりする時くらいだと思います。 これは、セルフビルドをしたいと考えている人にとっては、最大の欠点ではないかと私は思っています。
一般的には、ツーバイ構法の一番の欠点は変更がしにくい点にあると言われています。 どの建築過程で変更するかにもよるのですが、断熱材を入れた後で変更したいと思ったら、かなり手間がかかります。
私も、風呂場の窓の大きさを変更した時に、かなり手間がかかったという苦い思い出があります。 大きさを変えるだけであの手間ですので、窓ひとつ追加・・・なんてことになったら泣きそうですね。
なので、最初の設計がかなり重要になります。変更の自由度は、在来の方が断然高いです。
あとは床から作っていくために、屋根がかかるまでの間、養生作業が大変だというのも欠点です。 上の写真は、屋根を養生中に撮ったモノです。 このブルーシートを、作業を開始する時に外して、終わってからはまたかけなおしておりました。
このように、ブルーシートで雨に濡れないようにはしていたのですが、ブルーシートというのは完全防水ではないため、どうしても濡れてしまうんですよね。